VOL.9 都インキ株式会社
サステナブルインクシリーズ

■CONCEPT

 印刷工程では、用紙やインクの他に洗浄溶剤、印刷機を動かすために使う電気等、さまざまな資材やエネルギーを使い、そこから気候変動や大気汚染等の原因となるCO2やVOC(揮発性有機化合物)等の物質が排出されます。そして、それらのCO2やVOCを削減するために開発したのが、サステナブルインクシリーズです。

 サステナブルインクシリーズには、VOCの排出抑制と化石資源の使用削減をねらい、石油系溶剤を植物油由来の溶剤に置き替えてバイオマス原料の配合比率を向上させた「サステナブルインク(R)」と、印刷会社での不動インク(注1)を有価物として回収し、新たに印刷用インクにリサイクルした「サステナブルブラックインク(R)」の二つがあります。

 お客様にサステナブルインクシリーズを広く利用いただくことで、印刷による利便性を確保しつつ、CO2やVOCの排出削減につながり、当社としてSDGsが目指す持続可能な社会の構築に貢献できるものと捉えています。

注1 不動インク・・・印刷会社が仕入れたインクのうち、消費しきらず、印刷会社の倉庫に長時間保存されているインク。

ℚ.製品の特長や、製品開発の背景をおしえてください。

▼VOCの排出削減に貢献する「サステナブルインク(R)」

 印刷用インクは、顔料(色の成分)、樹脂、溶剤、助剤で構成されています。オフセットインクは他の印刷インクに比べ非常にVOCは少なくなっていますが、従来のインクには石油系溶剤が使われていたため、印刷工程でVOCが排出される特徴がありました。VOCは光化学スモッグやシックハウス等の原因となる大気汚染物質のため、発生源である石油系溶剤を排除し、代わりに外食産業、学校給食等から得られる使用済み大豆油を精製した再生植物油(大豆油)及び植物油由来のノンVOC溶剤を使用した「サステナブルインク(R)」を開発しました。ノンVOCインクやバイオマス60(再生可能な植物由来の原料を60%使用しているインク)のインクは植物油インクと総称されるもののひとつで、当社は印刷適性を維持しつつ、バイオマスを60%と含有率を極限まで引き上げる工夫をしています。

 「サステナブルインク(R)」は、一般社団法人日本有機資源協会が運営するバイオマスマークの認定を受けている他、完全ノンVOCタイプの商品で、2024年中のフランス鉱物油規制*の規制値をクリアした、世界レベルでも環境対応した製品と言えます。

*鉱物油(石油系炭化水素に由来する原料から製造された油)を使用し、製造された印刷インクで包装材(プラスチックを含む)や紙(カタログ、取説など)への印刷を規制したフランスの独自規制。段階的に規制値が上がり、2025年1月1日からはさらに厳しくなります。新しい規制が適用されると、2025年1月以降対応できません。(2024年5月末現在の情報)

▼CO2の排出削減に貢献する「サステナブルブラックインク(R)」

 印刷会社で使用されないインクは、産業廃棄物として焼却処理されることが多いです。当社は、印刷会社でデッドストックとなり廃棄される未開封の印刷用インク(以下、不動インク)を有価物として回収し、色及び印刷適性の調整等を行い通常の黒色の印刷用インクと遜色ないレベルに仕上げた「サステナブルブラックインク(R)」とし、株式会社ダイトクコーポレーションと共同で開発しました。焼却処理時に排出されるCO2を、インク1トンあたり約2.17トン削減することができる上に資源の有効利用にもつながります。不動インクを黒色の印刷用インクにリサイクルしているのは当社のみです。また、「サステナブルブラックインク(R)」においてもバイオマス原料を使用しており、油性枚葉(注2)インクはバイオマス40%、オフ輪(注3)インクはバイオマス20%というラインナップがあります。

注2 枚葉・・・ロール状の巻取り紙ではなく、1枚ずつにカットされた紙を印刷機に通す印刷方式
注3 オフ輪・・・ロール状の巻取り紙を使う印刷機であるオフセット輪転機の略称

 

ℚ.この製品はどのような社会課題の解決に寄与すると考えていますか。

 「サステナブルインク(R)」は大気汚染等の原因となるVOCの排出削減及び原油に代表される化石資源の使用削減に貢献します。「サステナブルインク(R)」は、SDGsの目標3(すべての人に健康と福祉を)、目標12(持続可能な消費と生産のパターンを確保する)に貢献する製品として普及に取り組んでいます。

 「サステナブルブラックインク(R)」は、不動インクを廃インクとして焼却処理されることによるCO2排出を削減するため、気候変動対策に貢献する製品と位置付けています。「サステナブルブラックインク(R)」の製造と利用拡大には、不動インクを提供する印刷会社と「サステナブルブラックインク(R)」を採用する印刷会社の協力によります。そのため、それぞれの印刷会社への感謝の気持ちも込めて、毎年「リユース活動証明書」を発行させていただいています。

Q.サステナブルインクシリーズの採用事例をご紹介ください。

サステナブルインクシリーズはこれまで多くのお客様の印刷物にご利用いただいており、いくつかご紹介いたします。

▼「サステナブルインク(R)」採用事例
・SDGsを支援する情報誌『Let’s Save The Earth!』(内閣府認証NPO法人ジャパンメディカルケアアソシエーション様)

▼「サステナブルブラックインク(R)」採用事例
・万博応援マガジン EXPOST vol.2(サンケイ総合印刷株式会社様)
・チャリティオークション「Plastic Revives」展リーフレット(ポーラミュージアム アネックス様)

▼「サステナブルインク(R)」・「サステナブルブラックインク(R)」両方の採用事例
・SPトーナメント第8回 全日本中学女子軟式野球大会 パンフレット(公益財団法人全日本軟式野球連盟様)
・第11回堺ユースサッカーフェスティバル パンフレット(堺サッカー連盟様)

Q.今後の展開について教えてください。

 サステナブル(ブラック)インクが素晴らしい活動として日本国内で広まり、更には世界にSDGsのリーダーとして発信していけるようにしていきたいです。

グリーン購入ネットワーク(GPN)から

 個人や企業・地方自治体等の購入者が印刷用インクを直接購入することはありませんが、印刷用インクを使って印刷された印刷物を手にする機会は多く、環境に配慮されたインクと私たちの生活やビジネスとの接点は、多くあります。印刷物を発注する際に、サステナブルインクシリーズのインクを採用することにより、印刷工程における環境負荷削減につなげることができ、発注者・印刷会社・インクメーカが三位一体となった取り組みだと言えます。

CONTACT

商品に関するお問い合わせは企業へ直接ご連絡ください。
都インキ株式会社へご連絡ください。

※お問い合わせの際は
「GPN サステナブル商品・サービスを見た」旨をお伝えください。