2050年カーボンニュートラル実現のためには、製品開発においても新しい原料や技術の研究、導入は欠かせません。オカムラでは官民連携のプロジェクトや教育・研究機関などと連携しながら持続可能な社会の実現に向けた取り組みを続けています。Up-Ring(アップリング)は持続可能な社会の実現に向けて慶應義塾大学との協業を通じて開発した、素材と製法にこだわった環境配慮型の家具シリーズです。
慶應義塾大学KGRI環デザイン&デジタルマニュファクチャリング創造センター(代表 田中浩也)とのコラボレーションにより生まれたUp-Ring(アップリング)シリーズ。2018年から2020年にかけて行われた環境省の委託事業「バイオポリエチレン家具プリント製造実証事業」の成果に基づき開発を行ってきました。バイオマスポリエチレンを原料とし、3Dプリンタを使って生産する Up-Ringシリーズは、脱炭素社会の実現に向けた新しいチャレンジです。
3Dプリンタの特性を活かして曲線を多用した有機的なデザインは、象徴的な存在としてオフィスのラウンジスペースを演出します。チェアは、立ち座りしやすいように前傾姿勢が取れ、座面下に荷物置きがあるなど機能面にも配慮しています。チェアと合わせてセットできるカフェテーブルはベース部を3Dプリンタによって製造しており、天板は筆記作業しやすいように平滑な木天板を使用しています。
原料のバイオマスポリエチレンはサトウキビから作られています。サトウキビは生育の過程で、CO2を吸収(固定)するため、従来の石油由来樹脂を使用した場合と比べ、製品ライフサイクル全体におけるCO2排出量を約50%削減。温室効果ガスの排出抑制効果が期待できるとともに、化石資源などの枯渇性資源の使用削減に貢献します。またサトウキビの非可食成分から製造されるため、食料との競合も発生しづらくなっています。
3Dプリンタを使った製法は、従来の射出成型に必要な金型を必要としないため、生産準備段階での費用削減を図ることができ、製造時の無駄な材料消費を抑え、1台からでも生産が可能です。将来的には国内各地に3Dプリンタを設置し、納品先に最も近い場所で製造することで、輸送経路の短縮による更なるCO2排出量の削減や物流に関する社会課題への対策が期待できます。
ものづくりにおける脱炭素化が求められる中、製品ライフサイクル全体におけるCO2排出量を約50%削減する画期的な製品と言えるでしょう。サトウキビの非可食成分が頑丈なチェアに姿を変える素材と、3Dプリンタを使い、1台からでも生産できる斬新な生産方法に驚きます。大学との協業は、ものづくりに新たな着想を与え、サステナビリティへもさらなる可能性を感じることができます。