革手袋の他、腕時計のベルトやバッグ、野球のグラブ等、私たちの身の回りには多くの皮革製品があります。
現在の工業用向け革手袋市場では、価格が主な焦点となっており、低価格化を進めるばかりに、環境や安全性に関する配慮が不足しています。工場によっては、排水処理をせずに河川、土壌へ直接流し、排水処理施設があったとしても、処理容量がオーバーしていることを知ったうえで排水を続け、環境汚染を続けています。また、工場作業者においても、薬品を使用するにもかかわらず、素手、素足、保護具等を全く装着せず、工場より支給されず従事している環境があります。
これらの課題を解決し、持続可能なソリューションを提供するために、当社は2023年にLWG(Leather Working Group)認証レザーを使用したワーキンググローブの生産を開始しました。当社の「サスティナブルレザーグローブ」はこのLWG認証を受けた製品で、国内の革製ワーキンググローブ市場では初めての認証製品です。
LWG認証以外の革に関する世界的な認証機関は少なく、LWG認証機関が掲げる「自然環境への対策」、「作る人、つかう人への安全性」等を確実に行う上で、LWG認証を取得することは必須だと考えています。皮革製品をつくるために、牛や豚などの皮をなめしますが、これらの皮を柔らかくし、なめし剤を浸透させるために大量の水を使用します。また、皮をやわらかくするために使用する、クロムなめし剤や植物由来のタンニン、皮を染色するために使用される染料や、仕上げ処理に使用される化学物質も環境に影響を与える可能性があり、これらの化学物質が適切に管理されない場合、土壌や水質を汚染するリスクがあります。
なめし工程や縫製工程は海外の工場で行うことが多く、排水処理や化学物質管理が適切に行われないと、工場労働者の健康に影響が出ることもあります。過去には、児童労働が行われていたり、労働者が適正な賃金を受け取れていなかったり、安全な作業環境が確保されず、労働者の人権が守られているとは言えない事例も報告されていました。
皮革業界全体で持続可能な慣行を推進し、環境に配慮した皮革の製造を促進するために創設された国際的な認証プログラムがLWG(Leather Working Group)認証制度で、2005年に設立されました。
革をなめす工場がLWG認証を受けるためには、化学物質管理やエネルギー消費、排水処理、環境管理システム等17項目に及ぶ認証基準をクリアする必要があります。
LWG認証は環境だけでなく、社会的責任に関する様々な側面も考慮していることが最大の特徴だと言えます。労働環境の改善や労働者の権利保護に関する以下のような項目が監査の対象となっています。LWG認証を取得しているということは、以下のような項目が適正に行われていることになります。
・労働者が安全な環境で作業できるように適切な措置が講じられているか。「サスティナブルレザーグローブ」を生産する工場への定期的な視察を行っており、LWG認証基準に順守した生産を行っているか、生産について不具合がないか確認を行っております。
2023年より生産を開始してから、作業環境を常に改善しており、生産者もより安全な作業環境で従事できるような取り組みを続けております。
また、新商品の開発や生産工場の技術向上などの打ち合わせは多く、リモート会議などをほぼ毎日のように行っております。アイテム数を増やすことにより、この取り組みがユーザー様に届くように日々邁進しております。現在、LWG認証のグレードが「SILVER RATED」と中間のグレードにて取得していますが、より高度な「GOLD RATED」へのランクアップを目指しております。今よりも環境影響を最小限に抑えるための取り組みを、より効果的に行う必要があり、非常に厳しい課題ではありますが、進めてまいります。
また、この取り組みがより多くのユーザー様へ届くよう、新商品の開発、展示会への出展、取り組みについての情報発信を続けてまいります。革手袋だけでなく、腕時計に財布、靴など、私たちは、たくさんの皮革製品に囲まれて生活をしていますが、なかなか生産地やつくられる様子をうかがい知ることはできません。しかし、皮のなめし工程で、工場で働く生産者の健康や安全、自然環境を守ろうとする思いは、LWG認証ロゴとして、その価値を私たちに届けてくれます。これからもサステナブルレザーのけん引役として、ホンモノを届けていただけることを期待しています。